
「離婚の話し合い自体は進んでいる。ただ、マンションとローンをどうするかだけが決まらない」
江戸川区のマンションにお住まいだった40代のご夫婦から、こうしたご相談をいただきました。夫婦それぞれが借入をするペアローンで購入した物件で、ローン残高はまだ3,000万円以上。どちらか一方が住み続けるにも、売るにも、それぞれ乗り越えなければならない壁がありました。
最終的には、ご相談から約2か月半で売却が完了し、住宅ローンを完済。残った代金を財産分与としてお二人で分け、離婚協議を締めくくることができました。どのように整理していったのか、経緯をご紹介します。
※本事例は実際にいただくご相談内容をもとに再構成した架空の事例です。物件情報・ご相談内容は実在のものではありません。
目次
1. 物件・お客様の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エリア | 東京都江戸川区(最寄駅から徒歩7分) |
| 物件種別 | 分譲マンション(3LDK) |
| 築年数 | 築14年 |
| 専有面積 | 70.8㎡ |
| 購入時期・価格 | 約10年前に中古で購入(4,280万円) |
| 住宅ローン | ペアローン(夫・妻それぞれが借入) |
| ローン残高 | 合計3,210万円(夫2,040万円・妻1,170万円) |
| 名義 | 夫婦の共有(持分 夫6:妻4) |
| ご相談者 | 夫(44歳・会社員)、妻(42歳・会社員) |
| ご相談時の居住状況 | 夫が居住、妻とお子様は別居中 |
| ご相談から引渡しまで | 約2か月半 |
2. ご相談に至った背景
ご相談者のBさんご夫婦は、お子様の小学校入学に合わせて江戸川区内のマンションを購入されました。共働きで収入があったため、お二人がそれぞれ住宅ローンを組むペアローンを選択。持分は借入額に合わせて、夫6:妻4としていました。
それから約10年。夫婦関係の悪化を経て、1年ほど前に奥様がお子様を連れて実家近くの賃貸住宅へ転居されました。離婚についてはお互いに合意しており、親権や養育費の話もおおむねまとまっていたそうです。
止まっていたのは、マンションの扱いでした。
ご主人は一人で住み続けていましたが、自分の分のローン返済に加え、別居後も奥様名義のローンを奥様が払い続けている状態。奥様にとっては、自分が住んでいない家のローンと、新居の家賃を二重に負担していることになります。「この状況を早く終わらせたい」という奥様のご意向をきっかけに、お二人で当社へご相談にいらっしゃいました。
3. ご夫婦が抱えていた3つの課題
課題1|ペアローンのため、どちらか一方だけでは解決できない
ご主人が住み続ける案も検討されました。しかし、そのためには奥様名義のローンをご主人がまとめて借り換える必要があります。ご主人の年収だけで3,210万円の借り換え審査に通るかは不透明で、金融機関に相談した段階で難しいとの感触を得ていました。
逆に、奥様が自分のローンだけ抜けることもできません。ペアローンでは、それぞれの借入に対して互いの持分が担保に入っているのが一般的です。離婚したからといって、金融機関が片方の債務だけを外してくれるわけではないのです。
課題2|売ってもローンが残るのではないかという不安
「買ったときより値下がりしているはず。売ってもローンが残ったらどうしよう」。これが、お二人が売却に踏み切れなかった最大の理由でした。
売却代金でローンを完済できなければ、不足分を手元の資金で補わなければ、抵当権を外すことができません。いくらで売れるのかが分からないまま、離婚協議だけが先に進んでいる状態でした。
課題3|財産分与の「分け方」が決まらない
マンションの購入時、頭金の一部はご主人のご両親からの援助でした。ご主人は「その分は考慮してほしい」と考え、奥様は「返済はずっと二人でしてきた」と考えている。どちらにも言い分があり、売却額が見えないこともあって、話がまとまらずにいました。
4. 離婚時の住宅ローンと財産分与で押さえておきたいこと
Bさんご夫婦のような状況は、離婚を考えるご夫婦の間で決して珍しくありません。判断の前提となるポイントを整理します。
名義に関係なく、婚姻中に築いた財産は分与の対象
財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に分け合う制度です。不動産の名義がどちらか一方であっても、婚姻中に購入し、婚姻中の収入から返済してきたのであれば、原則として夫婦の共有財産として扱われます。分け方は2分の1ずつが基本です。
一方、結婚前から持っていた預貯金や、親からの贈与・相続で得た財産は「特有財産」と呼ばれ、原則として分与の対象外です。Bさんのケースでいえば、ご主人のご両親からの頭金援助がこれにあたる可能性があります。
住宅ローンが残る家は「家の価値−ローン残高」で考える
ローンが残っている不動産は、家の価値から残債を差し引いた金額が分与の対象になると考えるのが一般的です。
- 家の価値がローン残高を上回る場合(アンダーローン):差額がプラスの財産として分与の対象になる
- ローン残高が家の価値を上回る場合(オーバーローン):家そのものの価値はゼロとみなされることが多く、ローンの負担をどう分けるかが別途問題になる
つまり、まず「いくらで売れるのか」が分からなければ、財産分与の話は前に進みません。お二人の話し合いが止まっていた理由も、ここにありました。
財産分与の請求には期限がある
財産分与は、離婚後に請求することも可能です。ただし期限があり、従来は離婚から2年以内とされてきました。2026年4月1日に施行された改正民法により、この期間は5年に延長されています。なお、施行日より前に成立した離婚については、従来どおり2年が適用されます。
期限が延びたとはいえ、離婚後に元配偶者と連絡を取り合い、不動産の売却や名義変更を進めるのは負担の大きい作業です。離婚の成立前に、住宅の扱いまで含めて決着をつけておくのが望ましいと言えます。
売却時の税金にも注意が必要
自宅を売却して利益が出た場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。住まなくなった家でも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば対象になり得ます。共有名義の場合は、要件を満たせば持分ごとにそれぞれ適用できます。
また、財産分与として不動産そのものを相手に渡す場合、渡す側に譲渡所得税がかかることがあります。売却して現金で分けるのか、不動産のまま渡すのかによって税金の扱いが変わるため、方法を決める前に確認しておきたいポイントです。
5. 当社からのご提案
初回のご相談では、まず売却した場合の見込み額をお伝えすることから始めました。近隣の成約事例から、仲介で売り出した場合の想定価格は3,600万〜3,800万円。ローン残高の3,210万円を上回り、売れば完済できる見通しです。この数字をお伝えした時点で、お二人の表情が少し和らいだのを覚えています。
そのうえで、次の三つの方法をご提示しました。
提案1|ご主人が住み続け、奥様の持分とローンを引き取る
ご主人の借り換えが前提となりますが、審査が通る見込みは低い状況でした。また、通ったとしても、奥様の持分相当額を別途現金で支払う必要があります。
提案2|仲介で売却し、代金を分ける
最も高い価格を狙える方法です。ただし、売り出しから引渡しまでに数か月かかることもあり、その間は二重払いの状態が続きます。ご主人が住みながら内覧に対応する必要があり、近隣に売却や離婚の事情が伝わる可能性もありました。
提案3|当社が直接買い取り、期間と金額を確定させる(採用)
当社が買主となるため、広告や内覧は行いません。価格は仲介より抑えめになりますが、決済日を先に確定できるため、ローン完済と財産分与のスケジュールを逆算して組めます。
奥様からは「多少安くなっても、二重払いを一日でも早く終わらせたい」、ご主人からは「同じマンションの人に知られずに済むならありがたい」とのお言葉があり、この方法に決まりました。
6. 解決までの流れ
-
STEP1
ご夫婦同席でのご相談(1日目)
当社事務所にお二人でお越しいただきました。ご事情を伺ったうえで、売却見込み額とローン残高の関係、そして財産分与の基本的な考え方を説明しています。この時点では、どちらの言い分が正しいかといった判断は一切しないよう心がけました。
-
STEP2
室内確認と買取価格のご提示(9日目)
ご主人の立ち会いのもと、室内と共用部を確認。管理組合の修繕計画や管理費の滞納がないことも確認したうえで、3,480万円をご提示しました。ローンを完済したうえで、約270万円が手元に残る計算です。残置物の処分費は当社負担としています。
-
STEP3
金融機関への完済手続きの確認(12日目〜20日目)
お二人それぞれの借入先に、一括返済の手続きと抵当権抹消の段取りを確認しました。ペアローンの場合は、2本のローンを同じ日に完済し、抵当権を同時に外す必要があります。決済日に合わせて、両方の金融機関と日程を調整しました。
-
STEP4
財産分与の内容を固める(14日目〜30日目)
手元に残る金額が見えたことで、財産分与の話し合いが一気に具体的になりました。お二人がそれぞれ依頼していた弁護士を通じて、ご主人のご両親からの頭金援助分の扱いを含めた分配方法を協議。売却代金の分け方を離婚協議書に盛り込む形で合意されました。当社は分配の内容には関与せず、決済時の送金方法の調整のみを担っています。
-
STEP5
ご契約(38日目)
共有者であるお二人にご来店いただき、売買契約を締結。ご主人の退去日と、決済日の約1週間前までに転居先を確保していただく段取りも確認しました。
-
STEP6
決済・お引渡し(74日目)
司法書士立ち会いのもと、所有権移転と代金のお支払いを実施。売買代金からお二人のローンをそれぞれ完済し、残った金額は離婚協議書の内容に沿って、お二人の口座へ直接振り込む形としました。
7. 解決の結果|Before・After
| 項目 | ご相談前 | 解決後 |
|---|---|---|
| 住宅ローン | 合計3,210万円が残存 | 2本とも完済 |
| 奥様の負担 | ローンと家賃の二重払い | 解消 |
| ペアローンの関係 | 互いに担保で結びついた状態 | 完全に解消 |
| 財産分与 | 金額が見えず協議が停滞 | 売却代金をもとに合意 |
| 売却の事情 | 近隣に知られたくない | 広告・内覧なしで売却 |
| 売却代金 | ― | 3,480万円(諸費用・税金控除前) |
| ご相談から引渡しまで | ― | 約2か月半 |
離婚後もお子様を通じてやり取りは続くため、住まいとお金の問題を残さずに区切れたことが、何よりの成果だったとお二人はおっしゃっていました。
8. お客様の声
住んでいない家のローンを払い続けるのは、金額以上に気持ちの負担が大きかったです。売ったらローンが残るのではと思い込んでいたので、最初に見込み額を聞いて、ようやく前に進めると思えました。
夫婦で相談に行くのは気まずかったのですが、どちらの味方にもならずに説明してもらえたので、冷静に話を聞くことができました。
(江戸川区・40代女性)
正直、自分が住み続けたい気持ちもありました。ただ、借り換えが難しいと分かった時点で、これ以上元妻に負担をかけるわけにはいかないと思いました。マンションの住人に知られずに売れたこと、引越しの日程に合わせて決済日を決められたことがありがたかったです。
(江戸川区・40代男性)
9. 担当スタッフからのコメント
離婚に伴う住まいのご相談では、「売れる金額」が分からないことが、話し合いを止めている一番の原因になっているケースが多くあります。今回も、見込み額とローン残高を並べてお見せしたことで、財産分与の協議が具体的に動き出しました。
ペアローンや連帯債務で購入されたご夫婦の場合、離婚が成立しても住宅ローンの関係は自動的には解消されません。どちらか一方が住み続けるにしても、借り換えの審査や持分の買い取りといったハードルがあります。「とりあえず片方が住み続けて、ローンはそのまま」という形で離婚すると、何年も経ってから返済が滞り、もう一方に請求が来るといったトラブルにつながりかねません。
私たち不動産会社にできるのは、不動産の価値とその処分方法をお伝えすることです。財産分与の割合や離婚条件そのものは、ご夫婦の話し合いや弁護士の方の領分になります。今回もその線引きを守り、お二人のどちらにも肩入れしないことを意識して進めました。
江戸川区は駅近のファミリー向けマンションの需要が安定しているエリアです。ご自宅がいくらで売れるのか、まずは数字を知ることから始めてみてください。
10. 同じようなお悩みをお持ちの方へ
次のいずれかに当てはまる方は、一度ご相談ください。
- 離婚を考えているが、住宅ローンが残る家をどうするか決まらない
- ペアローンや連帯債務で購入していて、離婚後の関係を断ちたい
- 売ってもローンが残るのではないかと不安で、動けずにいる
- 別居中で、住んでいない家のローンを払い続けている
- 財産分与の話し合いで、家の価値が分からず止まっている
- 近所や知人に知られずに売却したい
ご相談・査定・買取価格のご提示まで、費用はいただきません。ご夫婦おそろいでも、どちらか一方だけでもご相談いただけます。弁護士や司法書士、税理士が必要な場面では、提携先をご紹介することも可能です。ご相談内容は外部に漏れることのないよう、厳重に管理いたします。
※本記事の税制・法制度に関する記載は2026年10月時点の情報です。個別の税額や特例の適用可否は、所轄の税務署または税理士へ、財産分与の具体的な内容は弁護士へご確認ください。



